2025.05.26
グリーンウォッシュに陥らないために
SDGsやESGといった社会的な変化に伴い、環境に配慮した製品やサービスを提供することが企業価値の向上につながると考える人が増えてきたように感じる。多くの企業が「環境に優しい」ことを企業活動の柱として掲げるようになってきたのではないだろうか。しかし、こうした動きの中で問題視されているのが「グリーンウォッシュ(Greenwashing)」である。これは、企業が自らの利益のために、広告等を通じて実態以上に環境に配慮しているように見せかけ、消費者や投資家から良い印象を得ようとする行為を指す。グリーンウォッシュかどうかの線引きははっきりしていないため、意図せずグリーンウォッシュに陥ってしまっているケースも少なくないと考えられる。
国連でも議論されているように、ある製品のラベルに「エコ」「ナチュラル」「環境負荷低減」等の言葉が用いられていたとしても、言葉からイメージされる以上に、その製品の製造過程において多くのエネルギーや有害物質が使用されている場合は、それがグリーンウォッシュに該当する可能性がある。また、企業が温室効果ガスの削減を対外的に公表していても、実際には具体的な計画や行動が伴っていないこともあるそうだ。さらに、海外に広がるサプライチェーンにおいて、現地でのESGコンプライアンスが十分に把握できていないのにも関わらず、企業活動全体が環境社会問題に前向きであるような広報を行っているケースも存在する。
こうした背景を受け、EUでは2024年に「不公正取引方法指令」を改正し、根拠のない環境主張や曖昧な用語の使用を規制対象とする方針を打ち出した。この改正により、企業は環境に関する表現を使用する際に、科学的・客観的な裏付けが求められるようになった。
グリーンウォッシュが問題視されるのは、それが消費者を故意に、あるいは意図せずして欺く行為である点にある。消費者が「できるだけ環境に配慮した商品を選びたい」と考えている中で、過大な広告表現等によって誤解を招いてしまうことは、その意志を裏切ることになる。また、真摯に環境への取り組みを行っている企業にとっては、不誠実な企業と同列に扱われることで、競争上の不利益を被る可能性もある。
グリーンウォッシュを防ぐためには、情報の発信側となる企業がESG情報開示の透明性を高めることが必要である。たとえば、温室効果ガスの排出量やエネルギー使用量、廃棄物処理・処分状況などをわかりやすく定量的に示すことや第三者機関による認証を受けることなどが効果的である。もちろん、情報を受け取る側がリテラシーを高めることも重要である。
M&A環境デューディリジェンス等、弊社の日常業務から感じるところでは、透明性の高い企業は、自社が抱えるESG課題を自らホームページ上で説明し、実態と乖離のない情報提供を行っている。「環境にやさしい」企業であることが、単なるイメージ戦略でとどまるのではなく、実態に即した透明性の高い情報開示であることを心がけるべきである。今後、規制やガイドラインがさらに整備されていくことが予想される中で、事業活動全体に根差した環境配慮の姿勢が求められていくことであろう。企業自らが抱える重要なESG課題とその現状を、ビジネスプロセスやサプライチェーンの観点を踏まえて正確に把握することで、消費者や投資家からの信頼を得ることに直結するはずだ。
本件に限らず、国内外の環境デューディリジェンス(環境DD)のご相談はこちらからお問い合わせください。
国連でも議論されているように、ある製品のラベルに「エコ」「ナチュラル」「環境負荷低減」等の言葉が用いられていたとしても、言葉からイメージされる以上に、その製品の製造過程において多くのエネルギーや有害物質が使用されている場合は、それがグリーンウォッシュに該当する可能性がある。また、企業が温室効果ガスの削減を対外的に公表していても、実際には具体的な計画や行動が伴っていないこともあるそうだ。さらに、海外に広がるサプライチェーンにおいて、現地でのESGコンプライアンスが十分に把握できていないのにも関わらず、企業活動全体が環境社会問題に前向きであるような広報を行っているケースも存在する。
- ●信頼性のある計画が存在しないのにも関わらず、温室効果ガス排出量をネットゼロに削減すると主張する
- ●事業内容や使用素材について、意図的に曖昧な情報のみを公表する
- ●「グリーン」「エコフレンドリー」といった定義が不明確な表現を使用し、誤解を招くラベリングを行う
- ●限定的な改善を実態以上に効果があるかのように強調することや、最低限の規制基準を満たしただけの製品を過剰に評価するような広告をする
- ●特定の環境要素だけを強調し、他の重要な影響を無視する
- ●製品とは無関係な法令や規制に関する遵法性を強調する
- ●製品とその生産活動を切り離して評価し、実態を隠す
参照:The United Nations, Climate Action "Greenwashing-the deceptive tactics behind environmental claims"
こうした背景を受け、EUでは2024年に「不公正取引方法指令」を改正し、根拠のない環境主張や曖昧な用語の使用を規制対象とする方針を打ち出した。この改正により、企業は環境に関する表現を使用する際に、科学的・客観的な裏付けが求められるようになった。
グリーンウォッシュが問題視されるのは、それが消費者を故意に、あるいは意図せずして欺く行為である点にある。消費者が「できるだけ環境に配慮した商品を選びたい」と考えている中で、過大な広告表現等によって誤解を招いてしまうことは、その意志を裏切ることになる。また、真摯に環境への取り組みを行っている企業にとっては、不誠実な企業と同列に扱われることで、競争上の不利益を被る可能性もある。
グリーンウォッシュを防ぐためには、情報の発信側となる企業がESG情報開示の透明性を高めることが必要である。たとえば、温室効果ガスの排出量やエネルギー使用量、廃棄物処理・処分状況などをわかりやすく定量的に示すことや第三者機関による認証を受けることなどが効果的である。もちろん、情報を受け取る側がリテラシーを高めることも重要である。
M&A環境デューディリジェンス等、弊社の日常業務から感じるところでは、透明性の高い企業は、自社が抱えるESG課題を自らホームページ上で説明し、実態と乖離のない情報提供を行っている。「環境にやさしい」企業であることが、単なるイメージ戦略でとどまるのではなく、実態に即した透明性の高い情報開示であることを心がけるべきである。今後、規制やガイドラインがさらに整備されていくことが予想される中で、事業活動全体に根差した環境配慮の姿勢が求められていくことであろう。企業自らが抱える重要なESG課題とその現状を、ビジネスプロセスやサプライチェーンの観点を踏まえて正確に把握することで、消費者や投資家からの信頼を得ることに直結するはずだ。
本件に限らず、国内外の環境デューディリジェンス(環境DD)のご相談はこちらからお問い合わせください。
(本記事は、2025年4月21日までに日本語、または英語にて入手された情報に基づき執筆したものです。万一、内容に誤りがあった場合でも、一切の責任を負いかねます。)